プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムの違い|「休んでいる」か「出勤して不調」か(経産省の定義・損失割合・測定方法)

最終更新:2026年10月18日 / Longevity Methods for 戦略的健康経営編集部

エビデンス:ヒト試験は限定的

小規模・短期のヒト試験はあるが、結論は未確立

今回の評価:用語の定義と、健康関連コストに占める割合(東京大学 古井祐司らの試算)は、確立した整理です。一方、これらの指標は本人へのアンケート(自己申告)で把握するため、数値の絶対的な水準や各社の比較は、慎重に扱う必要があります。

要点(現時点の研究状況)

  • 違いは「出勤しているかどうか」です。アブセンティーイズムは「傷病による欠勤」(休んでいる)、プレゼンティーイズムは「出勤はしているものの、健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況」(来ているが力が出ない)を指します(経済産業省「健康投資管理会計ガイドライン」【解説29】・確認日 2026-10-18)。どちらも健康問題による労働生産性の損失で、同ガイドラインは、プレゼンティーイズムの損失額は医療費・薬剤費やアブセンティーイズムの損失額より大きい場合が多いと整理しています。
  • 表記は「アブセンティーイズム」(absenteeism)が一般的ですが、「アプセンティーイズム」「アブセンティーズム」と書かれることもあり、いずれも同じ意味です(プレゼンティーイズムも「プレゼンティーズム」と表記されることがあります)。
  • 損失の大きさ:東京大学 健康経営研究ユニットの資料では、日本企業の健康関連コストの内訳は相対的プレゼンティーイズム77.9%/医療費15.7%/アブセンティーイズム4.4%/傷病手当金1.0%/労災給付金0.9%です(内閣府シンポジウム 古井祐司氏資料・2016年・確認日 2026-10-18)。見えにくい「出勤しているが不調」の損失が最も大きくなっています。
  • いずれも本人へのアンケート(自己申告)で把握する指標であり、尺度が複数あるため、他社の数値と並べて比較することはできません(尺度ごとの測定方法・計算方法は、専用の記事で比較しています)。
  • 健康投資がこれらの指標を改善するという相関は各社が報告していますが、因果は確立していません。自社で1つの尺度を決めて時系列で追い、生産性・活力の変化として捉えることが適切な使い方です。

プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムの違い(一目表・経産省の定義)

経済産業省の「健康投資管理会計ガイドライン」(2020年6月12日)は、【解説29】で2つの用語を次のように定義しています(確認日 2026-10-18)。

アブセンティーイズムとは傷病による欠勤のことを指し、プレゼンティーイズムとは出勤はしているものの、健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況を指す。
アブセンティーイズムプレゼンティーイズム
意味傷病による欠勤(休んでいる)出勤しているが健康上の問題で完全なパフォーマンスが出せない(来ているが力が出ない)
ガイドラインが例示する測り方①従業員アンケート(「昨年1年間に、自分の病気で何日仕事を休みましたか」)②人事情報:欠勤・休職日数 ③人事情報:傷病休業者数・日数(暦30日以上の疾病休業)質問紙による自己記入(WHO-HPQ、東大1項目版、WLQ-J、QQmethod など)
金額換算の例(Human Capital Approach)アブセンティーイズムの日数×総報酬日額プレゼンティーイズムの損失割合×総報酬年額
健康関連コストに占める割合(東京大学 健康経営研究ユニット資料)4.4%(アンケート)77.9%(相対的プレゼンティーイズム)
注意点有給休暇での病欠は人事データでは拾えず、過小評価になりうる尺度ごとに結果の意味が異なり、結果同士を直接比較できない

同ガイドラインは、これらの指標を改善するために従業員が傷病を隠す・治療を受けない(受けさせない)ことがあってはならないとし、本質的な改善は傷病の予防と、治療と仕事を両立できる環境づくりだと明記しています。

損失コストの内訳:プレゼンティーイズムはアブセンティーイズムの何倍か

「出勤しているが不調」の損失が「休んでいる」損失より大きいことは、国内の2つの調査で数字として示されています(いずれも確認日 2026-10-18)。

調査プレゼンティーイズムアブセンティーイズムそのほか対象・前提
東京大学 政策ビジョン研究センター 健康経営研究ユニット(内閣府シンポジウム 2016年6月 古井祐司氏資料)77.9%(相対的プレゼンティーイズム)4.4%(アンケート)医療費15.7%/傷病手当金1.0%/労災給付金0.9%日本企業の健康関連コストの構造(割合)
横浜市立大学・産業医科大学(2025年6月発表、Journal of Occupational and Environmental Medicine 掲載)約7.3兆円/年約0.3兆円/年合計 約7.6兆円(GDPの1.1%相当)全国の労働者27,507名への2022年のインターネット調査。「気分が沈む」「眠れない」などメンタルヘルス症状による損失に限った試算

前提(対象・疾患の範囲・換算方法)がまったく違うため、2つの数字を足したり直接比べたりはできません。ただし、どちらでもプレゼンティーイズムの損失がアブセンティーイズムを大きく上回る点は共通しています。なお横浜市立大学の発表は、6月11日の配信後に金額の誤りが訂正され、6月16日に修正版が出ています(上記は修正版の値)。

測定指標の違い:WHO-HPQ・SPQ(東大1項目版)・WLQ・WFun・QQmethod

アブセンティーイズムは欠勤・休職日数(人事データ)やアンケートで数えられますが、プレゼンティーイズムは質問紙による自己記入で測ります。経産省ガイドラインが例示する尺度は次のとおりです(確認日 2026-10-18)。

尺度開発元設問結果の読み方
WHO-HPQWHO(ハーバードメディカルスクール作成)3問絶対的・相対的プレゼンティーイズムの2通りで表示。ガイドラインは、コスト換算には相対的プレゼンティーイズムを用いるのが妥当としています
SPQ(東大1項目版)東京大学1問「病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として過去4週間の自身の仕事を評価」。プレゼンティーイズム=100%−回答値(70%と答えた人は30%)
WLQ(日本語版 WLQ-J)タフツ大学医学部(日本語版はSOMPOリスケアマネジメント・有料)25問・4尺度時間管理・身体活動・集中力/対人関係・仕事の結果について、支障の頻度を5段階で回答
WFun産業医科大学7問合計7〜35点。高いほど労働機能障害が大きく、21点以上で中程度以上
QQmethod—症状の有無+4問症状がある時の仕事の「量」と「質」を10段階で回答し、有症状日数と掛け合わせて損失を出す

尺度によって「高いほど良い」型と「高いほど悪い」型があり、結果同士は比べられません。同ガイドラインも、測定結果を外部に公表する際は測定方法を明示するよう求めています。尺度の選び方・計算方法の詳細はプレゼンティーイズムの測定方法・計算方法の比較で扱っています。

健康経営度調査での扱い(測定している企業の割合)

経済産業省の健康経営度調査(健康経営優良法人・健康経営銘柄の認定に使う調査)では、アブセンティーイズム・プレゼンティーイズム・ワークエンゲイジメントを「業務パフォーマンス指標」として、測定の有無と、測定結果・測定方法の開示を尋ねています。令和4年度調査(回答3,169法人)の集計は次のとおりです(経済産業省 健康投資WG 第8回 事務局資料・2023年3月16日、確認日 2026-10-18)。

指標測定している測定結果を開示(複数年度分)測定方法を開示
アブセンティーイズム1,823法人(57.5%)428法人(13.5%)423法人(13.3%)
プレゼンティーイズム1,205法人(38.0%)372法人(11.7%)440法人(13.9%)
ワークエンゲイジメント1,683法人(53.1%)466法人(14.7%)487法人(15.4%)

欠勤(アブセンティーイズム)は人事データで数えやすい一方、プレゼンティーイズムはアンケートが必要なため、測定している企業の割合が低くなっています。同資料では、この開示を翌年度の調査から評価の対象とする案が示されました。認定に向けた準備は健康経営優良法人の取得ロードマップで整理しています。

2つの用語の意味と違い

健康経営・ロンジェビティ経営において頻繁に用いられるのが、アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムという対の概念です。

  • アブセンティーイズム(absenteeism):病気やけがで欠勤・休職して働けない状態です。休んでいることによる損失を指します。
  • プレゼンティーイズム(presenteeism):出勤はしているが、心身の不調で本来のパフォーマンスを発揮できていない状態です。頭痛・花粉症・睡眠不足・メンタル不調・肩こりなどにより、出勤していても能力を十分に発揮できないことによる損失を指します。

直感的には、休む人のコスト(アブセンティーイズム)のほうが大きいように見えますが、実際は逆であり、出勤しているが不調な人のコスト(プレゼンティーイズム)のほうがはるかに大きいとされています。この点が、健康経営の出発点となっています。

ロンジェビティ経営で最も重要とされる理由

ロンジェビティを経営資源として活用する目的は、単に病気を減らすことではなく、働く人の活力と生産性を長く保つことにあります。その効果が最も大きく表れるのが、プレゼンティーイズムです。

東京大学 健康経営研究ユニットの資料(内閣府シンポジウム 2016年 古井祐司氏説明資料)では、日本企業の健康関連コストの内訳は、相対的プレゼンティーイズム77.9%/医療費15.7%/アブセンティーイズム(欠勤)4.4%とされています。このように、企業が負担している健康に関する損失の大半は、医療費でも欠勤でもなく、「出勤しているが、不調により生産性が下がっている」という見えにくい部分です(特定の企業群・測定手法にもとづく試算値であり、割合は母集団により変動しうる点に留保が必要です)。

そのため、睡眠・運動・食事・メンタルといったロンジェビティ施策や健康投資は、医療費の削減よりも、プレゼンティーイズムの改善、すなわち生産性の向上を主な目的とすることが、経営上合理的な考え方です。

数値を読む際の前提(自己申告であること)

プレゼンティーイズムは、レントゲンのように客観的に測定できるものではなく、本人へのアンケート(自己申告)で把握します。尺度が複数あり、「損失=低いほど良い」タイプと「パフォーマンス=高いほど良い」タイプが混在するため、他社の数値と並べて優劣を論じることはできません。

どの尺度をどのように使い、損失率をどのように算出するかは、プレゼンティーイズムの測定方法(WFun・WHO-HPQ等の比較)で、項目数・スコアの方向・計算方法・限界を一覧で比較しています。実務では、自社で1つの尺度を決め、同じ条件で時系列に追うことが基本です。

ロンジェビティ施策による改善効果の検証

「健康投資でプレゼンティーイズムが◯%改善した」という報告は、各社から出ています。ただし、そのほとんどは前年度比の自己申告値や相関であり、施策とアウトカムの因果関係が統計的に確立しているわけではありません(在宅勤務の比率・季節・回答者の構成の変化などの交絡を、十分に排除できていない)。

また、「健康経営に取り組む企業は株価・業績が良い」という関係も、相関であり、因果ではない点に注意が必要です(もともと経営体力のある優良企業が、健康経営と株価の両方を実現できているという、逆の因果・交絡の可能性)。この論点は、日本企業の業界別 健康経営事例で詳しく扱っています。

ただし、取り組む価値がないわけではありません。プレゼンティーイズムは、働く人の不調による生産性の低下という実在のコストであり、それを可視化し、自社の指標で改善していくこと自体に意味があります。過度な期待も全面的な否定も避け、検証しながら投資することが、ロンジェビティ経営の基本姿勢です。

欠勤と出勤時の不調は、まず自社の指標で測定します

アブセンティーイズム(欠勤)とプレゼンティーイズム(出勤時の不調)は、健康経営の効果を測る2つの指標です。特にプレゼンティーイズムは、損失の大半を占める見えにくいコストであり、ロンジェビティ施策の主な目的とすべき指標です。ただし、数値は自己申告であり、尺度が統一されておらず、因果は確立していないという留保があります。他社との比較で判断するのではなく、自社で1つの尺度を決めて時系列で追うことが、数字に左右されない健康経営の第一歩です。基礎については健康経営とは何かを、測定と体制づくりをあわせて進める場合は健康経営優良法人の取得ロードマップもあわせてご覧ください。

出典・参考にした研究

※本記事は効果効能を保証・断定するものではなく、公表されている研究・一次情報を中立に整理したものです。サプリメントは医薬品ではありません。体調・治療の判断は医師等の専門家にご相談ください。

よくある質問

アブセンティーイズムとは何ですか?

経済産業省の「健康投資管理会計ガイドライン」(2020年)では、アブセンティーイズムは「傷病による欠勤」と定義されています。対になるプレゼンティーイズムは「出勤はしているものの、健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況」です。測り方として、従業員アンケート(昨年1年間に病気で休んだ日数)、人事データの欠勤・休職日数、30日以上の疾病休業者数・日数の3つが例示されています。

プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムの違いは?

アブセンティーイズムは、病気やけがで欠勤・休職して働けない状態(休んでいる状態)、プレゼンティーイズムは、出勤しているが、心身の不調で本来の生産性を発揮できていない状態(出勤しているが能力を十分に発揮できない状態)です。両者は対になる概念であり、健康経営ではプレゼンティーイズムの損失のほうがはるかに大きいとされています。

なぜプレゼンティーイズムが重要視されるのですか?

東京大学 健康経営研究ユニットの資料では、日本企業の健康関連コストの内訳は相対的プレゼンティーイズム77.9%/医療費15.7%/アブセンティーイズム4.4%で、出勤しているが不調であることによる損失が最も大きいためです。横浜市立大学などの2025年の試算でも、メンタルヘルス症状による損失はプレゼンティーズム約7.3兆円に対しアブセンティーズム約0.3兆円でした。

「アプセンティーイズム」と「アブセンティーイズム」は違うものですか?

同じものです。英語の absenteeism のカタカナ表記の揺れで、「アブセンティーイズム」が一般的ですが、「アプセンティーイズム」「アブセンティーズム」とも書かれます。意味はいずれも、病気やけがによる欠勤(経済産業省の定義では「傷病による欠勤」)です。

健康経営度調査でプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムの測定は求められますか?

健康経営度調査では「業務パフォーマンス指標」として、測定しているか、測定結果と測定方法を開示しているかが問われています。令和4年度調査(3,169法人)では、測定している法人はアブセンティーイズム57.5%、プレゼンティーイズム38.0%でした(経済産業省 健康投資WG資料、2023年3月)。

プレゼンティーイズムは客観的に測れるのですか?

客観的な測定はできず、本人へのアンケート(自己申告)で把握します。尺度が複数あり、企業間で数値を並べて比較することはできません。具体的な測定方法・計算方法(尺度ごとの項目数やスコアの方向、損失率の算出)は、当サイトの「プレゼンティーイズムの測定方法(WFun・WHO-HPQ等の比較)」の記事で整理しています。

ロンジェビティ施策でプレゼンティーイズムは改善しますか?

各社が改善を報告していますが、その多くは自己申告値や相関であり、因果関係が確立しているわけではありません。過度な期待も全面的な否定も避け、自社の尺度で継続的に測定しながら、生産性・活力の変化として検証していくことが適切な進め方です。

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