HRQOL(健康関連QOL)とは|QOLとの違いと、SF-36とEQ-5Dの違いを比較表で解説

最終更新:2026年11月3日 / Longevity Methods for 戦略的健康経営編集部

エビデンス:ヒト試験は限定的

小規模・短期のヒト試験はあるが、結論は未確立

今回の評価:SF-36・EQ-5Dは、いずれも国際的に検証された標準的な尺度であり、設計・スコアリングは、公開文献・公式機関の一次情報で確認できます。ただし、どちらも自己申告(自記式)の主観的な評価であり、測定の目的が異なります(SF-36=健康プロファイルの記述/EQ-5D=経済評価用の効用値)。異なる尺度のスコアは、相互に換算・比較できない点に注意が必要です。

要点(現時点の研究状況)

  • HRQOLとは(QOLとの違い):HRQOL(健康関連QOL)は、「疾患や治療が,患者の主観的健康感(メンタルヘルス,活力,痛み,など)や,毎日行っている仕事,家事,社会活動にどのようなインパクトを与えているか,これを定量化したもの」と定義されています(中医協 費-2 2012年・福原俊一 2002 の定義を引用)。QOLは、生きがい・人生の満足や宗教・人生観、社会・環境の特性など健康に関連しない部分も含む広い概念で、HRQOLはそのうち疾病と医療介入の影響を受ける部分に絞ったものです。HRQOLは、標準化された尺度(SF-36・EQ-5Dなど)で測定します(確認日 2026-11-03)。
  • SF-36とEQ-5Dの違い(要点):SF-36は、36項目で8つの下位尺度(各0〜100点・高いほど良好)を算出する「プロファイル型」であり、健康のどの側面が低いかを示す尺度です。EQ-5D-5Lは、5項目×5水準(3,125通りの健康状態)を1つの効用値(日本版の範囲は1〜−0.025)に換算する「インデックス型」であり、QALY(質調整生存年)の算出に用いる尺度です。中医協の資料でも、QALYの算出に用いる尺度にEQ-5D、用いない尺度にSF-36が分類されています(出典は本文・確認日 2026-10-28)。
  • 健康関連QOL(HRQOL)の代表的な測定尺度は、SF-36とEQ-5Dの2系統です。SF-36は36問で8つの下位尺度(身体機能・日常役割機能〈身体〉・体の痛み・全体的健康感・活力・社会生活機能・日常役割機能〈精神〉・心の健康)を測定する「プロファイル型」、EQ-5D-5Lは5問(移動・身の回りの管理・ふだんの活動・痛み/不快感・不安/ふさぎ込み)で、効用値という1つの数値に集約する「インデックス型」です。
  • EQ-5Dの効用値は、QALY(質調整生存年)の算出に用いることができる点が主な特徴であり、中医協の「費用対効果評価の分析ガイドライン」(2026年度版)でも、QALYの算出に用いるQOL値の尺度として、日本語版のEQ-5D-5Lが第一選択として推奨されています。一方、SF-36は、性別・年代別の国民標準値との比較ができ、どの側面のQOLが低いかを8つの次元で示すことができます。
  • このように、2つの尺度に優劣はなく、用途が異なります。健康状態の内訳を把握したい場合はSF-36、施策の費用対効果を金額換算で検討したい場合はEQ-5Dが適しています。また、SF-36の「70点」とEQ-5Dの「0.85」を並べて比較することはできません。これは、プレゼンティーイズムの尺度(SPQとWLQ-J)が比較できないのと同じ構造です。
  • どちらも自己申告による主観的な評価であり、実施時期・回答環境・母集団によって数値は変動します。実務上の要点は、他の指標と同様に、1つの尺度に決めて、同じ条件で経年比較することです。単発の数値や他社との比較で判断しないでください。

HRQOLとは:QOLとの違いと測定対象

中医協の資料(費-2「QOL評価の具体的方法等について」2012年)は、健康関連QOLを「疾患や治療が,患者の主観的健康感(メンタルヘルス,活力,痛み,など)や,毎日行っている仕事,家事,社会活動にどのようなインパクトを与えているか,これを定量化したもの」と定義しています(福原俊一「臨床のためのQOL評価と疫学」日本腰痛会誌 2002 からの引用)。同資料の概念図では、QOL全体のなかに、生きがい・人生の満足、宗教・人生観、個人特性、社会・環境特性にかかわる「健康に関連しないQOL」と、疾病・医療介入の影響を受ける「健康関連QOL」が区別されています。

QOL(Quality of Life・生活の質)は本来、生活全般の満足を含む広い概念ですが、医療・健康の文脈では「健康状態が生活の質に与える影響」に絞った健康関連QOL(HRQOL: Health-Related Quality of Life)を測定します。検査値(血圧・血糖)が「体の状態」を測るのに対し、HRQOLは「その状態で本人がどれだけ支障なく・良好に生活できているか」という本人視点の指標です。

ここで重要なのは、HRQOLは必ず標準化された質問票(尺度)で測るということです。自由回答のアンケートや独自の満足度調査は、検証された尺度ではないためHRQOLの測定とは呼べません。また、尺度には、設計の考え方が異なる2系統(プロファイル型のSF-36と、インデックス型のEQ-5D)があります。

SF-36:8次元で健康を描く「プロファイル型」

SF-36(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)は世界で最も広く使われるHRQOL尺度のひとつで、36問の回答から、8つの下位尺度を算出します。①身体機能 ②日常役割機能(身体)③体の痛み ④全体的健康感 ⑤活力 ⑥社会生活機能 ⑦日常役割機能(精神)⑧心の健康。

日本語版には性別・年代別の国民標準値が整備されており(標準値の平均と標準偏差を使って偏差得点に換算できる)、「自社集団の活力スコアは同年代の国民平均よりどれだけ低いか」という読み方ができます。日本語版の版権者はMedical Outcome Trust・QualityMetric Inc.・福原俊一氏で、Qualitest株式会社が提供しています。調査に使用するには使用登録申請が必要です。

長所は、健康の内訳がわかることです。たとえば、「身体機能は高いが、活力と心の健康が低い」といったパターンが把握でき、施策の対象を絞ることができます。短所は、8つの数値が算出されるため、1つの総合値で意思決定しにくいこと、そして36問の回答の負担です。

EQ-5D:効用値に集約し、QALYにつながる「インデックス型」

EQ-5D-5L(EuroQol 5 dimensions 5-level)は、5問(①移動の程度、②身の回りの管理、③ふだんの活動、④痛み/不快感、⑤不安/ふさぎ込み)に5段階で回答する、短い尺度です。回答パターンは日本人の価値づけ研究にもとづくスコアリングで効用値(おおむね0=死亡相当〜1=完全な健康)という1つの数値に換算されます。

この効用値の主な用途は、QALY(質調整生存年)の算出です。「効用値0.8で10年生きる=8QALY」のように、生存期間を質で重みづけすることができ、医薬品や医療技術の費用対効果評価における共通の単位となります。日本でも、中医協の「費用対効果評価の分析ガイドライン」(2026年度版)が、QALYの算出に用いるQOL値の尺度として日本語版のEQ-5D-5Lを第一選択として推奨しています。

長所は、回答の短さと、経済評価への接続です。短所は、5問であるため健康の内訳が粗いこと、軽微な変化を捉えにくいこと(旧3L版では天井効果=回答が満点付近に偏る課題が知られ、5段階化で改善が図られました)です。

比較表:SF-36とEQ-5Dの違い(項目数・スコア範囲・用途)

SF-36EQ-5D-5L
型プロファイル型(8次元)インデックス型(1値に集約)
項目数・次元数36項目(うち35項目で8下位尺度を算出、1項目は健康の推移)5項目(移動の程度・身の回りの管理・ふだんの活動・痛み/不快感・不安/ふさぎ込み)
回答の段階項目ごとに異なる選択肢各項目5水準(5×5×5×5×5=3,125通りの健康状態)
スコア範囲各下位尺度0〜100点(高いほど良好)効用値:完全な健康「11111」=1、日本版の最小は「55555」の−0.025、2番目に高い値は0.895
日本人の基準性別・年代別の国民標準値(2017年版)と比較可日本人1,026名のcTTO調査にもとづく換算表(2015年)
要約スコア日本語版は3コンポーネント(身体的・精神的・役割/社会的)効用値そのものが要約値
対象年齢16歳以上成人向け(本稿の5L版)
QALY算出用いない尺度に分類用いる尺度に分類
利用手続き使用登録申請が必要EuroQol Groupの使用許諾が必要(研究目的は無料)
得意なこと健康の内訳の記述・集団のどこが弱いかQALY算出・費用対効果評価
制度上の位置づけ研究・臨床で広く使用中医協の分析ガイドラインで第一選択として推奨
限界総合1値がない・回答負担内訳が粗い・軽微な変化に鈍い
共通の限界自己申告の主観評価/実施条件・母集団で変動/相互のスコア換算・比較は不可

表の数字の出典(確認日 2026-10-28):SF-36の項目構成・0〜100点・16歳以上は鈴鴨・福原「SF-36日本語版の特徴と活用」(日本腰痛会誌 2002)、v2・3コンポーネント・2017年国民標準値・使用登録はQualitest、EQ-5D-5Lの3,125状態・効用値の範囲・1,026名は池田ら「日本語版EQ-5D-5Lにおけるスコアリング法の開発」(保健医療科学 2015)、QALY算出への分類は中医協 費-2「QOL評価の具体的方法等について」(2012年10月31日)、EQ-5D-5Lの使用許諾は国立保健医療科学院C2H、中医協での第一選択は「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン 2026年度版」。

繰り返しになりますが、この2つの尺度のスコアは互いに換算できません。「SF-36で測定したA社」と「EQ-5Dで測定したB社」の数値を並べることは、当サイトがプレゼンティーイズムの尺度の比較で指摘したのと同様の誤りです。

健康経営・ロンジェビティの実務での活用方法

健康経営やウェルビーイング施策の効果測定にHRQOL尺度を用いる場合の実務上のポイントは、4つあります。

  • ①目的で選ぶ:施策の対象(どの次元が弱いか)を把握したい場合はSF-36系、施策の投資対効果を試算したい場合はEQ-5D(効用値×人数×期間で、QALY換算の議論が可能)を選びます。ただし、QALYに換算しても、ROIの記事で整理したとおり、因果の証明にはならない点は変わりません。
  • ②ライセンスと実施設計を確認する:SF-36日本語版は、使用登録申請が必要です。実施時期・対象・回収率をそろえないと、経年比較が成立しません。
  • ③1尺度に決めて経年で見る:年ごとに尺度を変えると過去と比較できなくなります。
  • ④単独の指標にしない:HRQOLは、プレゼンティーイズム・ストレスチェック・健診データと並ぶ指標の一つです。主観的な指標(HRQOL)と客観的な指標(健診値)を組み合わせて読むことで、数字を偏って解釈することを防げます。

健康寿命が社会の指標であるのに対し、HRQOL尺度は集団・個人の指標です。どちらも、定義と条件をそろえて初めて意味を持ちます。この点は、当サイトの他の記事と共通する考え方です。

出典・参考にした研究

※本記事は効果効能を保証・断定するものではなく、公表されている研究・一次情報を中立に整理したものです。サプリメントは医薬品ではありません。体調・治療の判断は医師等の専門家にご相談ください。

よくある質問

HRQOLとQOLの違いは何ですか?

QOL(生活の質)は、生きがい・人生の満足や人生観、社会・環境など、健康に関連しない部分も含む広い概念です。HRQOL(健康関連QOL)は、そのうち疾患や治療が主観的な健康感(メンタルヘルス・活力・痛みなど)や仕事・家事・社会活動に与える影響を定量化したものです(中医協 費-2 2012年の定義・概念図)。HRQOLは、SF-36やEQ-5Dなどの標準化された尺度で測定します。

SF-36とEQ-5Dの違いを一言でいうと?

SF-36は、36項目・8つの下位尺度(各0〜100点)で健康の内訳を示すプロファイル型、EQ-5D-5Lは、5項目×5水準の回答を1つの効用値(日本版は1〜−0.025)に換算するインデックス型であり、QALY(質調整生存年)の算出に用います。中医協の資料(2012年)でも、QALYの算出に用いる尺度にEQ-5D、用いない尺度にSF-36が分類されています。

SF-36とEQ-5Dはどちらを使うべきですか?

目的によって異なります。健康状態の内訳(8つの次元のどこが弱いか)を把握して施策の対象を絞りたい場合はSF-36、費用対効果の議論(QALY換算)につなげたい場合はEQ-5D-5Lが適しています。優劣ではなく設計の考え方の違いであり、両方を併用する研究も多くあります。いずれの場合も、途中で尺度を変えると経年比較ができなくなる点にご注意ください。

EQ-5Dの効用値とは何ですか?

健康状態を、「1=完全な健康、0=死亡相当」を基準とする1つの数値で表したものです。5項目×5段階の回答パターンを、日本人を対象とした価値づけ研究にもとづくスコアリングで換算します。効用値に生存期間を掛けるとQALY(質調整生存年)となり、医療の費用対効果評価の共通の単位として用いられています。

SF-36のスコアとEQ-5Dの効用値は比較できますか?

比較はできません。SF-36は8つの下位尺度のスコア(国民標準値との比較用)、EQ-5Dは効用値(経済評価用)であり、測定している内容も数値の意味も異なります。異なる尺度で測定した集団同士の数値を並べて優劣を論じることは誤りです。比較する場合は、同じ尺度・同じ実施条件でそろえる必要があります。

健康経営の効果測定にHRQOL尺度は必要ですか?

必須ではありませんが、プレゼンティーイズムや健診データと組み合わせることで、「従業員の生活の質」という本人の視点の変化を追うことができます。導入する場合は、使用登録(SF-36日本語版は使用登録申請が必要)と実施設計(時期・対象・回収率の固定)を先に決め、1つの尺度での経年比較を前提とすることが実務的です。

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